カルシウム備忘録

カルシウムはラテン語の石灰(CALX)が語源です。

漆喰(しっくい)は中国語の石灰が語源です。

建築材料をつくる石灰(カルシウム)

@セメント材料
A左官材料
BALC(軽量気泡コンクリート)
Cケイ酸カルシウム板

@石灰石と粘土を粉砕混合して、高温で焼成したクリンカー(黒い塊)に石膏を混ぜ、微粉砕して作る現代文明における代表的な建築材料。モルタルやコンクリートの主要材料として、我が国では年間6,000万トン以上の需要がある。A消石灰に「つのまた」などの糊剤と「麻づた」などの繊維を混ぜて壁に塗る「漆喰」(しっくい)として用いられる。壁に塗りつけられた消石灰は空気中の二酸化炭素を吸収して炭酸カルシウムに変化し、強固な壁になる。B生石灰とケイ石(砂)とを粉砕混合し、これに水を練り混ぜ、サビ止め加工した鉄筋を組み込んだ型枠に(アルカリと反応する)アルミニウムなどの発砲剤を加えて注入固化させ、さらにオートクレーブ(高圧蒸気釜)で石灰とケイ石を反応させ、ケイ酸カルシウム水和物を生成させて作る。CALCと同じケイ酸カルシウム水和物と繊維との複合材料で、断熱材、耐火被覆材、内装材、外装材などに広く用いられる。

土を改良する石灰(カルシウム)

@路床改良
Aアスファルト舗装
B深い部分の改良
C飛行場の改良
D埋立地の改良

@高速道路、国道、一般道路の砕石の下に施す土は、必要な強度が満たされない時に石灰による改良を行っている。A道路のアスファルト舗装をする場合、骨材(砂利・砂)の他に耐久性を高めるために石灰石の微粉末を混合する。また、水を吸収しやすい骨材を利用する場合は、剥離防止のために消石灰が混合される。B建物の基礎など数10メートル程度の深い部分まで地盤の強度を高めるときは石灰によって改良を行う。C滑走路は飛行機の離着陸時に大きな力がかかるため、路床部分を石灰によって改良している。D海岸地帯の埋立地は軟らかい土で埋められているため、工場やコンテナー置場などを造成する場合は、軟弱地盤を石灰によって改良している。

鋼をつくる石灰(カルシウム)

@高炉
A電気炉
B合金鉄(フエロアロイ)

@鉄鉱石を溶かして銑鉄から鋼を作るときに、石灰石を加えて不純物(高炉スラグ)を取り除いている。A鉄屑を主原料として鋼を作るときは生石灰を加えて不純物を取り除いている。B電気炉を用いてマンガン、クロム、ニッケルなどと鉄の合金を作るときも、不純物を取り除くために生石灰を添加している。

化学工業を支える石灰(カルシウム)

@海水マグネシア
Aソーダ工業
Bカルシウムカーバイト
C石油化学工業
D紙パルプ工業
E酸性排水の中和

@高炉や焼却炉などに張る耐火レンガの素材であるマグネシアは、我が国では鉱物資源を産出しないので、海水から取り出している。海水に消石灰を加えると、海水中の塩化マグネシウムが水酸化マグネシウムに変わって沈降する。この水酸化マグネシウムを高温で焼成すると耐火レンガの素材になる。Aガラスや薬品の原料となるソーダ灰(炭酸ソーダ)は、アンモニア・ソーダ法によって製造されるが、この工程で石灰はアンモニアを回収するために使わる。また、繊維、紙パルプなどの漂白、上下水道の殺菌などに使われる「さらし粉」は、電解法で塩水から苛性ソーダを製造する際に、副生する塩素と石灰とを反応させて作る。B生石灰にコークスを配合し、電気炉で溶かしてカーバイト(炭化カルシウム)を作る。カーバイトは水と反応させてアセチレンを作り、合成ゴムの原料や溶接用に使用する。Cエポキシ樹脂の原料となるロルヒドリン、ポリウレタン樹脂の原料となるプロピレン・オキサイドの製造工程で石灰が使われる。D包装紙に使うクラフトパルプは木材を苛性ソーダを含む液で煮て作るが、この排液から苛性ソーダを回収するために生石灰が使われる。E石灰(主として消石灰)が、化学工業、製鉄、鉱山などのあらゆる産業で酸性排水の中和に使用されている。

水をきれいにする石灰(カルシウム)

@上水処理
A下水処理

@浄水場では河川や湖沼などから取り入れた水を浄化して、安全な飲料水を作っているが、この浄化工程で石灰は欠かせないものとなっている。参考例→PH調整:凝集沈殿装置に消石灰を添加して浄化を早めると同時にPHの調整を行う。赤水の防止:上水を消石灰処理すると、鉄管の内側にカルシウム化合物の皮膜ができて、鉄サビによる赤水の発生を防止する。汚泥処理:原水から分離された汚泥に生石灰を加えると、脱水効果があり、運搬がしやすくなる。A下水処理場では、下水に空気を送り込んで、ある種の細菌を繁殖させ、水に溶けている栄養分(汚物)を全部食べさせている。腹一杯になった細菌(汚泥)を沈殿分離するときの凝集剤に消石灰が使われる。なお、消石灰には汚泥に対する消臭作用や殺菌作用がある。

海をよみがえらせる石灰(カルシウム)

@有機物の分解促進
Aリンおよび重金属類の固定
B作用効果の持続
C硫化水素の発生防止

@石灰による有機物のアルカリ分解は冬季(低温)でも促進されるので、赤潮の発生しやすい夏季に分解が集中するのを防ぐ。A赤潮発生因子の1つであるリンをリン酸石灰として沈殿除去し、赤潮の増殖促進物質である重金属類を石灰塩として底泥中に固定する。B石灰は海水中で溶解度が小さくアルカリ作用が持続する水酸化マグネシウムに置き換わる。C海底近くが酸欠状態になると、嫌気性の硫酸還元菌が活動して硫化水素が発生するが、石灰にはこの菌の増殖を阻止する作用がある。

空気の汚れを防ぐ石灰(カルシウム)

@排煙脱硫(酸性雨対策)
A排煙脱塩化水素(ダイオキシン対策)

@我が国の排ガスから硫黄酸化物を除去する技術は世界一の水準にあるといわれており、外国への技術供与も話題になっているが、その主役が石灰。排ガス中の硫黄酸化物は石灰と化合して除去され、副産物として排出される石膏(硫酸カルシウム)はセメントや石膏ボード、石膏プラスターなどの原料として使用されている。Aゴミの焼却場などで、排ガス中に塩化水素ガスが含まれている場合に、生石灰または消石灰を用いて除去する。

これからの農業を支える石灰(カルシウム)

@石灰質肥料
A消毒用石灰

@生石灰や消石灰などの石灰質肥料は、窒素肥料、リン酸肥料、カリ肥料と並ぶ重要な肥料で、江戸時代から使われている。生石灰、消石灰は我が国に多い酸性土壌の中和改良だけでなく、堆肥などの有機物の分解を促す効果がある。なお、今後有機農業などによって堆肥の施用が盛んになれば、日本の土壌に欠乏しているカルシウム分を石灰で補うことが必要になってくる。A果樹や野菜の消毒に用いるボルドー液(硫酸銅と石灰乳との混合物)には生石灰を使用する。ボルドー液は100年以上の歴史をもつ消毒剤。鳥インフルエンザが発生したときの現場の消毒には消石灰が使われている。

食品等に用いられる石灰(カルシウム)

@砂糖
Aこんにゃく
Bカリカリ梅
Cピータン

@砂糖を精製する時、不純物を取り除くために石灰が用いられる。粗糖を溶かした水溶液に消石灰を混ぜ、二酸化炭素を吹き込んで炭酸カルシウムを生成させると、不純物が沈着して沈殿除去される。Aこんにゃく芋の粉末を水やお湯で溶かしたものに消石灰の水溶液を混ぜると、コロイド粒子を凝集させて固まる。B消石灰でクエン酸を中和して、軟らかくなるのを防いでいる。Cアヒルの卵を消石灰の水溶液に漬け込んでから、粘土とモミ殻に包んで土の中で発酵させて作る。中華料理の食材。

石灰(カルシウム)のおもしろい用途

@食品加温剤
A食品乾燥剤
Bなめし皮
C白線
Dゴミ袋
E静的破砕剤
Fゴミ固形燃料(RDF)
Gフロン分解

@生石灰が水と反応する時の発熱作用を利用した、酒、弁当、しゅうまい、おでんなどを温める方法として広く実用化されている。A生石灰が水と反応しやすい(吸湿力が強い)ことを利用したもので、海苔、せんべいなどの防湿保存剤として用いられている。B石灰は弱アルカリ性なので皮を傷めずに繊維を軟らかくほぐす効果がある。C運動場のライン引きに使う白い粉は消石灰。D多くの自治体が採用している「炭カル」(炭酸カルシウム=石灰石の微粉末)入りのゴミ袋。E岩石をダイナマイトで破砕するのが危険なときに生石灰を使用する。生石灰と水とが反応して消石灰になる時の体積膨張の圧力を利用して岩石を破砕する。F可燃ゴミに生石灰または消石灰を混合して脱水・乾燥させてクレヨン状に成形したものを燃料に利用する。Gオゾン層を破壊するフロンを石灰石の焼成炉に投入すると、熱分解した塩素とフッ素がカルシウムと反応して活性度の高い(多孔質の)生石灰が得られる。

古代文明を支えた石灰(カルシウム)

@ピラミッド(エジプト)
A万里の長城(中国)
Bマヤの遺跡(メキシコ)
Cギリシャ・ローマの遺跡
D高松塚古墳(日本)

@石灰石を積み上げて表面に化粧板(花崗岩)を貼り付けた高さ140mに及ぶ巨大な建造物。現在は化粧板は剥がされてしまい石灰石の部分だけが残っている。A消石灰の「メジ」を用いて石やレンガをつなぎ合わせて築いた全長6,000kmに及ぶ大城壁(世界最大の建造物)。B16万平方kmに及ぶ広大な土地に石灰石でできた約3,000の建造物が散在している古代石造文明の遺跡。C神殿や競技場のほか、あらゆる建造物が石灰石や大理石(石灰石の変成岩)によって築かれている文化遺産。教会の内部は消石灰による漆喰壁を下地にして描かれたフレスコ画で装飾されている。D石室の石組みの「メジ」や内部壁画の下地に消石灰が用いられている。

 

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